トップアスリートの体のケアをして驚くことがある。
それは、想像以上に華奢(きゃしゃ)な選手が多いこと。
もちろん、後にウエイトトレーニングをゴリゴリに行って、筋骨隆々になる選手は多い。
私は身長170センチ65キロだけど、同じような体型で、というより、168センチくらいでも145キロのストレートと変化球で一軍で活躍するピッチャーもいる。
こういった経験から、当院では、
筋力≠パフォーマンス
だと考えている。
トリプルアクセルの比較
それをふまえてこちらの動画をご覧ください。
高くジャンプをする伊藤みどり。
綺麗な回転で飛ぶ浅田真央。
そして最後に出てくるのが紀平梨花。
その回転スピードは明らかに群を抜いている。
スピードとキレの違い
ここで重要なのは、この動画でもあった「回転のキレ」。
スピードとキレは違う。
スピードとは物体が移動を表す単位。
例えば、100m走の世界記録保持者(9.58秒)、ウサイン・ボルトはトップススピードに乗ると44.7km/hの速さだと言われている。これがスピード。
それに対してキレとは、どれだけ早く加速できるか?ということ。
ウサイン・ボルトでもスタートする前は止まっているわけで。そこから段々と加速していく。この加速していく過程、トップスピードに乗るのが早ければ早いほど、キレがあるというわけ。
つまり、
速い=スピード
早い=キレ
というのはうちの治療院での考え方。
つまり、紀平梨花は、ジャンプのスピードももちろんあるが、それに加えてキレもある。動画である通り、浅田真央よりも早く回転が始まっているわけで。
紀平梨花が筋力がなくてもキレとスピードを出せる理由
では、紀平梨花が筋力があるのかといえば、疑問である。
155センチでどちかというと小柄で、見た目も細い。
筋肉量が特別多いようにも見えない。
また、並外れた身体能力(例えばジャンプ力)などがあるとも聞いたことがない。
では、どうやってジャンプのスピード及びキレを出しているのか?
筋肉には筋紡錘と呼ばれるセンサーがある。
筋肉は急激に引っ張られると、この筋紡錘というセンサーが働く。
すると「これ以上、筋肉が引っ張られるとちぎれるから、急激に縮め!!」
と、命令する。
ちなみにこれは大脳で意識的に反応するんじゃなくて、
脊髄反射(脳を介さずに行われる反射)で行われる。
会社で例えるなら、上層部に報告せず、現場のトップ判断で行われる行為。
なので、余計な時間がかからず、コンマ何秒で筋肉が収縮する。
このような仕組みで行われる、急に起こる急激な筋肉の働きを筋反射、と呼ぶ。
例えば、地下鉄で寝ていてビクっとしながら起きるおっさんを見たことない?
あれは、寝ているおっさんが頭を下に落とした時に、首の後ろの筋肉が引っ張られ、筋紡錘が働き、筋反射が起きたために起こる。
脊髄反射で筋肉の収縮までに時間がかからず、さらに急激で強い筋収縮を起こす。つまり、この筋反射こそが、キレの正体なわけだ。
当院では、トップアスリートのケアを目的としている。
すなわち、彼らはこの筋反射を上手く使うことで高いパフォーマンスを実現している。決して、通常の筋力とはまるで違う筋肉の働きなわけ。
だから、今までのマッサージやストレッチのようなケアでは不十分なわけで。
ということで、そんな筋反射を上手く使えるようになるためのケアに興味のあるアスリートの方はこちらまで。