<お客様への想い>
私はスポーツトレーナーとしてアスリートの体のケアをしていたとき、「痛みが取れても、まだここが痛い」、「筋力がついても、もっと筋力をつけたい」、「満足してはいけない」と、上昇志向の選手ばかりでした。
スポーツトレーナーとしてうまくいかず、その後、高齢者と障害者のリハビリをするようになりました。
すると高齢者や障害者のリハビリを受ける方の多くは「歩けるだけでいい」、「立てるだけでもいい」、「寝返りができるだけでいい」という、目標の低い方ばかりでした。
当時、私はこの仕事が大嫌いでした。
上を目指すこともなく、努力もしない。そういう考えが理解できなかったからです。
でも、ある患者様に出会い、その考えは変わりました。
その方は50代のご夫婦の奥様で、脳梗塞のため右半身のマヒと言語障害が残っていました。
ご主人はそんな奥様のことを『そばにいてくれるだけで元気をくれる』と仰っていたのです。
人は、上を目指さなくても、ただそばにいるだけでも価値を与えられる。
そう知った時から私の治療が変わりました。
「もっともっと」と上を目指すのを止めました。
すると治療効果は格段に上がったのです。
仏教の般若心経にはこう書いてあります。
「なんとかしようとしなくていい。見えないなら見えないことを楽しめばいい。」と。
体が動かないなら現状を楽しめばいい。現状維持でいい。今あるものに感謝しよう。
たったそれだけで痛みは消え、寝たきりだった患者様が歩けるようになるなどの奇跡に何度も遭遇しました。
人は「もっともっと」と死ぬまで上を目指し続けます。それは終わりのない無限地獄です。
その無間地獄からの解放こそがリハビリであり治療ではないかと気付いたのです。
この考えは現代人にはすぐに理解が難しいことかもしれません。
しかしニューヨークのマッサージ『Kiichiro』では、体だけでなく心も軽くなるサポートをするために、そういった考えを伝えていきたいと思っております。